こんにちは!合理的でわかりやすいを目指すいまどき着物講座です。
第7講座は着物の柄と季節
洋服では最も馴染みのない着物文化、それが柄による季節感だと思います。
例えば桜の柄の着物。いつ着れるでしょう?やっぱり春かな、なんて思いますよね。でも違うのです。
・リアルな桜の木→早春〜桜の咲き始め
・リアルな桜と桜吹雪→咲き始め〜満開
・花びらのみやイラスト→通年
うん、実に面倒くさいですね。これこそが着物の素晴らしさであり、醍醐味とも言えますがそれはまだ先の話。初心者には高いハードルです。うっかり短期間しか着れない着物を買わないよう、しっかり押さえておきましょう。今回はわかりやすいよう図柄多めで!
柄選びの基本ルール
まずは柄選びの主なルールを5つ紹介します。
①季節は先取りが基本
植物など季節物は、まさにそのシーズンになる少し前に着用するのが粋とされます。クリスマスの柄などはまさにその日まで可能ですが、遅れるのはNG。
②季節限定は実は極一部
散々煽っておきながら、実は季節に注意しなければならない柄は動植物や行事物などの極一部。幾何学文様など、通年着れる柄のほうが多いのです。
■その季節にしか着れない柄
蒲公英(たんぽぽ)、紫陽花、秋の吹寄せ、雪持南天
■推奨の時期はあるけど通年着れる柄
まさにその季節はもちろん、通年も着用できる柄です。また雪柄を夏に着用することで冷涼感を表すという逆張りのパターンもあります。
松、雪花(せっか)
■季節感なく通年着用できる柄
パターン模様などは季節関係なく着用できる柄の代表例。
豆絞り、矢絣(やがすり)
③抽象的なら動植物でも通年OK
動植物でも、絵の種類によって時期か通年か変わります。枝や葉が詳細に描かれた写実的なものはその時期のみの着用です。一方、抽象化やイラスト化されたものは通年着られることが多いです。桜、梅、椿、トンボなどがあります。ちなみに蝶は通年可能です。
④組み合わせで変わる季節
また、柄の組み合わせで着用できる季節が変わるものもあります。
■組み合わせで通年可能
植物でも、松竹梅や四季の草花を集めたもの、桜と紅葉がセットなど複数の季節のものがまとめて描かれているものは通年着用できます。
四季の草花、桜と紅葉
■組み合わせで季節限定
一方、兎や月は単体では通年着用可能ですが、一緒に描かれると中秋の名月として8月後半から9月となります。
兎、月に兎、流水、龍田川(紅葉+流水)
⑤柄による格の違い
現代柄よりも古典柄のほうが格が高くなります。
また柄の付け方として、総柄よりも飛び柄のほうが格が高くなります。
分類別から見る着物の柄
それではどどんと、柄を見ていきましょう。ちなみに柄は、着物用語では文様(もんよう)と言います。ご紹介する文様は、特に推奨の季節があるものもあれど、全て通年着用可能なものだけをご用意しました!季節感は帯留めなど小物で幾らでも出せますから、着物本体は合理的にいきましょう。
今回は文様の歴史で分けたものと、柄そのもので分けた2軸で紹介します。
【1】現代柄と古典柄
まずはその柄の歴史で分けたものから。現代柄はここ最近の、古典柄は中国や日本古来の伝統的な柄を指します。古典柄のほうが格が高く礼装にもよく用いられます。古典柄にはさらに、特に代表するものとして、正倉院文様(しょうそういん)、有職文様(ゆうそく)、吉祥文様(きっしょう)等があります。
■現代柄
■古典柄
正倉院文様…奈良正倉院の貯蔵品に起因するペルシア風の柄
鳳凰、蜀江(しょっこう)
七宝(しちほう)、亀甲、向い蝶、立涌(たてわく)
吉祥文様…中国や日本古来のおめでたい柄
松竹梅、オシドリ、御所車(ごしょぐるま)、宝尽くし
【2】文様別の代表柄
柄そのもので分類する方法です。直観的にわかりやすいですね。
■幾何学文様…パターン化した文様が続いています。
紗綾形(さやがた)、市松、麻の葉、青海波(せいがいは)
■天象文様…雪輪、雲、霞、雨等空に関わる文様
雲取り、雪輪、エ霞(えがすみ)、大小霰(だいしょうあられ)
■植物文様…実際にある植物から、辻が花のような架空の植物も。
万寿菊、露芝(つゆしば)、辻が花、四君子(しくんし、梅竹菊蘭)
■動物文様…こちらも実際の動物や昆虫から、空想の動物まで。
■自然風景文様…茶屋辻などの建物を含んだ風景や水の流れなど。
山水、観世水(かんぜみず)
■器物文様…茶器、道具、装飾品等の物を表した文様
貝合わせ、ひょうたん
■物語人物文様…伊勢物語、源氏物語等に起因する柄や童などの人物。
源氏香(げんじこう)、童
さいごに
いかがでしたか?この回だけでも実に50種類以上の柄を紹介しましたが…ほんとに極々一部。奥が深いです。。でも通年着れる柄がこんなにあるなら少し安心ですよね。恐れずお気に入りの文様を見つけてみてください。