こんにちは!合理的でわかりやすいを目指すいまどき着物講座です。
第3講座は、着物の格とTPO
「お友達の結婚式に着物で行こうかな」と思ったら、どんな着物を選びますか?
明るい色?華やかな柄?答えはNO!
着物を着るときは「格」で選ばなければなりません。着物を始めるときの最初のハードルである「格」について、今回は説明したいと思います。
格にまつわる勘違い
「格」と言われると、何となく着物のグレードの話と想像は尽きますよね。まずはよくある勘違いから、格とは何かをイメージしてみてください。
着物=正装ではない
ハードルが高いことから、着物=正装と思われがちですが、そんなことはありません。洋服にドレスからジーパンまであるように、着物にも正装から普段着まできちんと感のレベルがあります。このレベルを「格」といいます。簡単に言えばTPOですね。最初の例のように、結婚式に行くならそれにあった格の着物を着ないと、先方に失礼になってしまうので注意しましょう。
格は値段では決まらない
着物といえば高級品のイメージで、実際高いものは数百万するものもあります。でも格は値段では決まらないのです。100万円でも小紋なら普段着だし、3万円でも訪問着なら結婚式に着ていくことができます。
格は高ければ良いというわけでもない
そんなに格にこだわるなら、とりあえず格の高いものを着ておけばいいんでしょ?と思いがちですが、これもまたNGで。パーティーや式などでは、基本的にゲストは、ホストや主役より下の格のものを着るのがベターとされています。ホストが5つ紋なら、ゲストは3つ紋以下に。えーそんなの聞かないとわからんと匙を投げたくなりますが、慣習化されているのでTPOに沿っておけば、まあ大丈夫です。
いまどき着物の格とTPO
格を決めるのは簡単に言えば、着物の柄と家紋の数。今回はまだ始まったばかりなので、極々ざっくりと説明したいと思います。
第一礼装(格:★★★)
①喪服
【柄】黒無地
【紋】5つ紋…喪主ないし家族のお葬式
ご存じの通りお葬式などに着用。ただ地方ルールも多く、基本的には家族や極近い遺族の場合のみとし、ゲストとして着用していくのはやめておくのが無難。
②振袖
【柄】袖の長さが2尺以上
本振袖…花嫁衣裳、成人式
中振袖…成人式、結婚式、パーティー
小振袖…(成人式)、気軽なパーティー
【紋】なし
こちらも成人式でお馴染み。ミスの第一礼装として、慶事からパーティーまでどこでも着用可能。袖の長さで、本振袖>中振袖>小振袖と格が変わるが、身長との兼ね合いもあり、最近はあまり厳密ではなさそう。
③黒留袖
【柄】黒無地に、裾に模様
【紋】5つ紋…新郎新婦の母や祖母、仲人
黒留袖は既婚女性の第一礼装で最も格が高いと言われますが、現代では一般人には結婚式に母親などが着るくらいしか機会はないでしょう。(芸事をされている方や慣習がある場合除く)
略礼装(格:★★)
④色留袖
【柄】カラー無地に、裾に模様
【紋】5つ紋…新郎新婦の姉妹等、叙勲
3つ紋…結婚式親戚、立派なパーティー
1つ紋…(結婚式ゲスト)、パーティー、(子の式典)
色留袖は簡単に言えば黒以外の留袖です。そのため5つ紋をつければ第一礼装となり、かつ未婚既婚問わず着用可能なので、新郎新婦の姉妹など近い身内が着用することが多いです。また皇室では黒は喪の色となるため、重要な行事では色留袖5つ紋着用になるとか。
一応3つ紋が主流ですが、「ホストの格より下」が原則なので、結婚式なら親戚程度、パーティーなら自分が主役だったり、かなりの意気込みでいくものに。
1つ紋だと訪問着と同格なので結婚式ゲストとしての着用も可能ですが、親族=色留袖のイメージもあるので、自分が主賓だったり上司だったりの場合が無難そう。パーティーなら基本大丈夫ですが、調和しそうな規模か見極めを。入学式もNGではないけれど、子どもが主役なので敬遠されがち。高齢になると訪問着より色留袖という説もあるので、年を取ると着用場面が広がりそうです。とにかく一番意見がバラバラで正解がないので、自分に求められる格を見極めて選んでみてください。
⑤訪問着
【柄】衿・肩から裾に一連の模様
【紋】1つ紋/なし…結婚式ゲスト、パーティー、子の式典
基本的にオールマイティでちゃんとしたところに着れる着物です。縫ってから柄をつけるので、縫い目も柄が繋がっているのが特徴です。紋は入れる派も、柄で訪問着として成立するので不要派もあります。紋がなければ観劇なども問題なしです。
⑥付け下げ
【柄】衿・肩から裾に模様
【紋】1つ紋/なし…結婚式ゲスト、パーティー、子の式典
あれデジャヴかなと思いますが、付け下げはほぼ訪問着と同じです。一応訪問着より格は下がると言われます。付け下げは訪問着と違い、すでに柄のついた反物を仕立てるため縫い目で柄が繋がっていないのが特徴です。しかし最近は付け下げと訪問着の区別は難しく、「柄が派手なら訪問着、地味なら付け下げ」という人も。付け下げ訪問着といっちゃう場合もあります。
⑦色無地
【柄】カラー無地
【紋】1つ紋…(結婚式ゲスト)、パーティー、子の式典
なし…普段着
色無地はその名の通り、カラー無地の着物です。1つ紋を入れれば略礼装として着用できますが、訪問着より格は下がるため、結婚式ゲストなら友人や軽めの会場などが無難です。また紋なしならば普段着となるので注意しましょう。一見すると仲居さんのようなコーディネートになってしまうので、地紋(生地の織柄)があるものやパステルカラーなどがおススメです。また色も、慶事のみ・弔事のみ・慶弔両用があるので選ぶ際は注意です。
普段着(格:★)
⑧江戸小紋
【柄】全体に極細かいパターン模様
【紋】1つ紋(五役)…(結婚式ゲスト)、パーティー、(子の式典)
なし…普段着
江戸小紋は小紋のなかで唯一、紋が入ると略礼装になる着物です。柄は江戸の遊びが活きた多種多様ですが、五役(鮫・角通し・行儀・縞・大小あられ)のみ紋を入れられます。とはいえ関西ではあまり他の小紋と格の違いを感じないようなので、関東寄りで色無地1つ紋よりやや格下のつもりで着用するのがよろしいかなと。紋がなければ普通の小紋と同格ですが、染の美しさから五役に紋は不要説や、同色刺繍紋でうやむやにする説もあるので他人の事に口出しは不要です。
⑨小紋
【柄】着物全体に繰り返しの柄(染め)
【紋】なし…普段着
日常着用するのはこの小紋。普段着といっても洋服と同じように、カジュアルからキレイ目まで様々あります。小紋の中でも、柄のつき方や模様で格が上下されます。
⑩織の着物
【柄】紬・銘仙・木綿などの織物
【紋】なし…普段着
もちろん織の着物も小紋になります。また厳密には織の着物の中でも格は様々で、中には訪問着までありますが、一般的には織の着物は最もカジュアルとなります。おしゃれ着としてはもちろん問題ありません。
さいごに
いかがでしたか?ざっと概論だけでもすごい量。。ちなみに着る機会のない花嫁衣裳と、浸透している浴衣については今回は省略しました。
「格」は着物の中でも重要かつ分かりにくいものです。いろいろなサイトを見ても意見はバラバラで正解はありません。肝心なのは、自分の判断軸を持つこと。そうすれば他人に指摘されても気にならなくなりますよ。